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実りの秋。グルメなひと時を楽しまれている方も多いのではないでしょうか。しかしそれも歯が健康であればこそ。食べ物をおいしいと感じられるのは味覚だけでなく、噛むことや触感、歯ざわりも大切な要素であるからです。
虫歯や歯槽膿漏などで大切な歯を失ってしまうと、義歯(取り外し入れ歯)を入れる場合と、歯を削って取り外しできないブリッジを入れる場合とがあります。
義歯のタイプとしては、残った歯にバネをかけて歯牙・粘膜負担の形をとる局部義歯と呼ばれるもの、そして粘膜負担だけに頼る総入れ歯があります。これらの方法が、日本では昔から当然のように行われています。
ただ、いずれの場合も手入れのわずらわしさや装着時の違和感、食べる楽しみがなくなるなどの問題を抱えています。
また、長期間入れ歯を装着していると、入れ歯と歯肉の間に隙間が出来て物が挟まりやすくなります。
これは入れ歯を装着することで、骨がやせ細っていくために起こる現象です。中でも、入れ歯の最大の欠点は、力を入れて、しっかり咬むことができないことです。
自分の歯で咬めば、一平方センチ当たり最大百~百十キログラムの力で咬むことができますが、入れ歯の場合は約七~十キログラムといわれています。
このように、ほぼ十分の一程度まで、咬む力が弱くなってしまうのが、入れ歯の実情です。特に総入れ歯には支えがなく、唾液で口蓋の粘膜に張り付いているだけなので、力を入れて、咬むことができません。
残った歯にバネをかける、局部義歯の場合は、支える歯牙に過重な負担がかかり、その結果、歯の欠損を増やしてしまうことにもなります。
このような、さまざまな弊害をもたらす従来の入れ歯に代わって、最近日本でも注目されている治療があります。
「インプラント(インプラント治療)」といいます。基本的にはインプラントも入れ歯の一種なのですが、治療法が全く異なります。
インプラントは歯の下にある顎の骨に安全性の高いチタン製の歯根を埋め込み、そこに人工歯を装着します。歯だけでなく、歯根まで再生されるので、インプラントでは咬む力は自分の歯の八割近くまで回復が見込めます。しかもインプラントを入れたところは強い力で咬むことが出来るので、骨はその力を受け止め、支えようとし、その体積を維持するため、ほとんど痩せません。
インプラントの場合、時には細い骨がかえって太ることもあり、インプラントだからこそ、咬む力を高めるといった効果もあります。アメリカにおいては、「歯を失ったら、インプラント(インプラント治療)」、というのが今では歯科の常識となっていて、現在多くの歯科大学では従来型の取り外し入れ歯の講義はありません。v
歯科医の役目は「噛めるようにする」こと、そして「残った歯を守る」ことという考え方の基、インプラントの治療を行っているからです。
「咬める・噛める」ことは、食を楽しむだけでなく、体全体の健康にも大切な役割を果たしています。
■平成16年9月28日