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思わぬ事故で歯を損傷したり、虫歯や歯槽膿漏で歯を欠損したりすることがあります。
このような場合よく行われる治療が、前後の歯を削り、冠を被せて間に義歯をいれてブリッジにする方法です。ただ、このような治療をした場合、後々困ったことになる可能性があります。
第一点は、歯の表面のエナメル質を削り取ってしまう問題です。
エナメル質は鉄よりも硬い組織で、歯の中の神経を外部刺激から守る役割をしています。しかしそれを一度削ると元に戻すことはできません。
エナメル質を削ることは、外部から菌が侵入しやすい状態をつくってしまうことになります。
第二点は、欠損部分に被せた金属と歯の境界にできる隙間の問題です。
この隙間をなくすには、大変な技術を要します。冠を被せる部分にどうしてもマイクロキャップと呼ばれる微細な隙間が出来やすくなります。
そこから虫歯になることも考えられます。その部分が歯肉の下にあれば、バクテリアの繁殖が起こり、歯槽膿漏の原因にもなります。
第三点は、ブリッジすることで土台になっている歯に負担をかけてしまうことです。
特に大きな力のかかる奥歯は、1本あたり最大100~110kgの力が加わると言われています。このような大きな力に耐えている奥歯にブリッジを施せば、欠損歯を支える土台になっている歯に負担をかけ、弱いほうの歯から骨の吸収が起こり、骨が痩せ細っていくことが多いのです。これにより虫歯や歯槽膿漏になる確率が高くなります。ブリッジした場合の歯牙の寿命は、短くなるのが通例です。
以上のような問題があることから、欧米では現在、治療に関して極力歯を歯を削らず、しかもブリッジなど行わないようになってきています。
スイスのジュネーブ大学のベルサー教授は、「私の大学では、歯が欠損したときのブリッジによる修復はもう学生には教えていません」と話しておられました。 その代わりとして採用されているのが、「インプラント("いんぷらんと"、インプラント治療)」です。
インプラント治療とは、歯の下にある顎の骨に安全性の高いチタン製の歯根を埋め込み、そこにインプラントによる人工歯を装着する治療方法です。
インプラントであれば、歯だけでなく、歯根まで再生されるので、咬む力も自分の歯の場合とほぼ同程度まで回復が見込めます。なぜなら強い力で咬むことで、骨はその力を受け止め、支えようとし、その体積を維持します。そのため骨が痩せることはほとんどありません。
学会の発表では、奥歯1本の欠損をインプラントで治療する率は、米国の歯科大学病院が80%、韓国が50%、日本では0.03%と報告されています。
高齢化が進む日本でも、健康的な食生活を維持できるインプラントは、今後ますます重視されることになりそうです。
■平成16年10月26日