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歯科医は冠を長持ちさせるために、歯をきれいに削って精密に型をとり、冠を境界線にピッタリ合わせようとします。
20年以上前に、当時の岡山大学歯学部補綴科(冠・ブリッジの研究科)は「冠の平均使用年数は約8年」と発表しています。
歯科医は、歯の表面に冠の辺縁のための段差をくっきりと付けて、冠の境界線の段差を型どりし、技工士は、石膏模型上の段差に冠をピッタリ合わせようと製作します。
しかし「型どりの寸法変化」「石膏が固まるときの膨張」「鋳造後の溶けた金属の収縮」などの問題によって、いかに上手な技工士が作ったとしても、歯やインプラントの段差境界線と冠のふちがピッタリ合う度合いは、60ミクロンが限界とされています。
バクテリアの大きさは4~10ミクロンが多いので、隙間が60ミクロンの場合は被せたその日からその隙間で繁殖し始めます。その結果、境界に虫歯ができて歯周病の原因となりますが、それが「冠は平均8年しか持たない」と言われる理由なのです。
天然歯の場合で長く持たせる方法は、元テキサス大学歯学部審美学科臨床教授の田中朝見先生が提唱した歯肉の下に60ミクロンの隙間を作らないコンタクトレンズラミネートベニアです。
この方法は、0.5~0.8ミリの薄いセラミックを歯肉の中には入れずに歯のおもて表面に張り付け、裏側は歯の先端近くで止めるかぶせ方です。歯肉の下に入れないので境界を歯ブラシで磨くことができ、虫歯になりにくく10年20年以上と楽に持たせることが充分期待できる方法になります。
インプラントと天然歯両方に応用できる冠の被せ方については、イタリアのイグナティオ・ロイ先生が20年前から提唱しているBOPTという方法があります。
土台の境界を歯肉の下に設定し、段差が何もない土台の表面に技工士が歯肉のふちから内部1ミリの位置に冠の境界ラインを書き、そこに冠を合わせる方法ですが、境界の段差がないので冠がより合わせやすくなり、バクテリアが繁殖しにくく、周囲歯肉の炎症が起こりにくいためインプラントが長持ちする方法なのです。このロイ先生は、プラマというBOPTインプラントをイタリアで作っています。
■平成29年2月23日