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最近、取り外し義歯を入れている患者さんから「インプラントで、もっとしっかり咬めるようにできますか?」という質問をよく受けます。
「もちろん、ほとんどすべてのケースでできますよ。」とお答えして、具体的に詳しくご説明しています。
上顎でも下顎でも長年取り外し入れ歯を使用しますと、入れ歯の圧力で顎の骨が吸収され、入れ歯が動きやすくなったり、咬むと痛くなったり、物が歯肉との間につまりやすくなったりしはじめます。それでもインプラントは当然できますが、インプラント体を埋入するのと同時に骨を造る骨造成を行うことが多くなります。この時、骨を造る量が少ない場合はできるまでの期間が短く済み、造る量が多い場合は通常期間が長くなります。
8~10㎜くらい骨を造る場合、10~12ヶ月くらい期間がかかることがあります。治療期間が長いと“患者さんが早く咬めない”“骨ができるまでの治癒期間が一番感染しやすいので、感染の機会をつくりやすい”といった問題を起こすことがまれにあります。
このような場合は、しばしば骨を造る材料(骨補填剤)に患者さん自身の血液から作った「PRF(多血小板フィブリン)」を混ぜて骨造成のスピードを早くする方法があります。患者さんから10~20cc(通常10cc。健康診断の時より少ない量)採血させていただき、遠心分離器にかけて“血小板を濃縮させた物”と“患者さん自身の血中のフィブリンが多い成分”が混ざり合わさった物に分けます。「PRF」は抗凝固剤などを一切使用せず、ウシトロンビンも使わずに自己由来のフィブリノーゲンを凝集させ、ゆっくりとフィブリンを固まらせます。
ゲル状の「PRF」は固まる時、その中に血小板サイトカインとグリカン鎖を大量に取り込むので、骨造成部ではゲル状の「PRF」から2~3週間かけて徐々にサイトカインが放出されます。サイトカインには3つの前炎症サイトカイン・抗炎症サイトカイン・血管形成の成長促進因子が含まれ、手術後の感染を抑制できます。組織にたいする基本的作用は“瘢痕(いわゆる傷跡)形成”です。つまり血管形成の促進・免疫制御(感染抑制)・循環幹細胞の捕獲(組織の再建)・創傷を被覆する上皮形成(傷口の閉鎖)がその作用です。
実際、骨補填剤に「PRF」を加えた場合、加えてないケースに比べて治癒期間を4ヶ月短縮できたとの研究報告があります。
このように「PRF」使用は、インプラントオペにおいて術後の経過を良くし、治癒期間の短縮をはかれるので“低侵襲オペ”に一役買えると当院では考えています。